2023年9月18日月曜日

  永久平和のためには何をすればいいかというと、基本的には生存競争の必然性のない世界、つまり争わなくても生きることのできる世界を作る必要がある。
 まず、「社会」ではなく「世界」だ。一部の社会だけがそれを達成しても、それ以外の社会に不満が残る。だから世界中がそれを達成した時、初めて本当の平和は訪れる。

 生存競争の必然性のない社会とは、基本的には高い生産性と人口の安定、この二つが必要になる。十九世紀以降の産業革命は生産性を飛躍的に高めてきたが、人口は急増した。人口の安定は二十世紀後半の一部の先進国のみで成し遂げられ、その後経済成長を遂げた他の地域にも広がっていったが、まだ世界全体からすれば十分ではない。
 地球の人口増加が止まり、それ以降、各国の生産力に応じた適正人口が維持されなくてはならない。理想を言えばその国の食料生産量で養える人口が望ましい。ただ、小国や砂漠の国などでそれが難しくても、健全な市場経済で適切な貿易が行われていれば問題はそれほど大きくない。ただ、世界全体の生産力に応じた世界人口は絶対に維持されなければならない。

 そしてこれが本当に難しい所だが、高い生産性は持続可能でなくてはならない。

 どの国も高い生産力でもって国民が飢える心配もなく豊かな生活を送れるのであれば、他国を侵略する必然性は薄れる。これが平和の第一条件になる。

 第二の世界平和の条件は、文化的多様性の確保され、同一地域に複数のルールの共存を避けなくてはならない。そのために国境が必要とされ、諸国家の独立が保障されなくてはならない。
 同一地域での複数のルールの共存は、その地域のルールの信頼性を損ねるもので、無政府状態を招く。
 喩えで言うなら、車が右側を走るか左側を走るかは、別にどっちが良いとは言えない問題だが、それでもどっちかに決めなければいけない。それと同じように、様々な社会的なルールには、必ずしもどれが優れるとは言えないものも多い。また様々なルールを思考錯誤する中でより良いルールが形成されてゆく以上、世界全体を一つのルールで縛ることはルールの発展性を奪うことになる。
 様々な国が様々なルールを試すことで、よりよいルールが発見されることになる。
 様々な民族の生活習慣に簡単に優劣をつけることができない以上、複数のルールは併存しなくてはならないが、同一地域で二つのルールが共存すれば無法状態になる。そのため、様々な異なるルールは地域を区切って行われなくてはならない。それが国家の存続する根拠となる。
 基本的にはたとえ複数の民族が共存するにしても、一つの地域での一つのルールは守られなくてはならない。郷に入れば郷に従え、と昔から言う通りだ。

 昔から民族国家という考え方はあり、社会主義でも民族自決の思想がある。基本的に民族ごとに国家を得られるようにする必要がある。ただ、それは国境の変更を認めない今の国際社会との間に深刻な矛盾を生じさせることになる。
 たとえばクルド人のような国家を持たないが、決して少数民族とは言えない規模を持つ集団もある。その一方で世界中に散在していたユダヤ人をイスラエルという小さな国に押し込むのも明らかに無理があった。ましてや国家を持たない少数民族は無数に存在する。
 彼らが地域的にまとまって生活しているのであれば、その独立を認めなくてはならない。一地域の独立であれば国境の変更とは矛盾しない。ただ国境が増えるだけになる。
 これにもロシアが行ったような危険な抜け道がある。つまり入植、独立、併合のプロセスで結果的に国土を拡大するというやり方だ。これは絶対に禁止されなくてはならない。独立の権利のあるのは、本来そこに住んでいたか、過去に強制移住させられた(ロヒンギャのような)に限定されなくてはならない。自発的な移民や入植での独立は認めてはならない。
 もちろん、実際は自発的にやって来た外国人労働者が、強制連行されたという虚偽の主張することも決して認めてはならない。

 民族の移動は実際に国家が労働力を求めて行うことが多いが、これも慎重に行わなくてはならない。基本的には自発的にやって来た者は、その土地のルールに従い、独立を認めないということを守って行く必要がある。複数ルールが横行すれば法治国家は崩壊して無政府状態になる。

 第三の世界平和の条件は、独裁国家を無くすということだ。独裁体制であれば、ほんの一握りの人の意思で戦争を起こすことができる。世界征服の野望であったり、対立民族の殲滅であったり、そういうことを企てる人間は、そうそう多数派にはならない。
 戦争が日常化してた前近代であれば、そういう人たちが多数派になることもあったが、長い平和になれた人たちが、簡単にその平和を捨てようとは思うまい。だが、独裁体制なら、そうした平和を望む多数派を押さえつけてでも戦争を起こすことが可能だ。
 これはこれまでの二つの条件、持続可能な高い生産性と人口の安定、同一地域の単一ルールが実現されていても、ほんの一部の人の気まぐれで戦争が起こる原因になる。地球規模での民主化を促す必要がある。

 持続可能な高い生産性と人口の安定、同一地域の単一ルール、地球規模での民主主義。この三つは今の世界の現実からすると、まだまだほど遠い。
 この理想に反する国家に対して、有効な制裁の手段も今のところは存在しない。国連はもう長いこと機能不全の状態にある。まして「世界の警察」と呼ばれてた国も、その国が呼びかける多国籍軍もウクライナには何の機能も果たさなかった。
 ここにもう一つ第四の難問がある。今までの三つの理想はそれぞれの国民の間で共有されれば実現可能だが、四番目の違反国に対する制裁は最も困難な問題なのかもしれない。

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