アビゲイル・シュライアーさんのIrreversible damege - the transgender craze seducing our daughters - (回復不能なダメージ─娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行─)は周知のように、日本では「あの子もトランスジェンダーになった─SNSで伝染する性転換ブームの悲劇─」というタイトルで翻訳書が出る予定だったが、一部の狂信的な人権派の人々によって中止させられた。
基本的には西洋人は長いことキリスト教の支配のもとに、同性愛者を犯罪とみなしてきた、その歪みに由来するトランスジェンダーへの無理解と混乱が原因と思われる。もちろん急速発症性性別違和などというものは医学的に存在しない。我々が知ってるのは中二病のことだ。
思春期には自分自身の独立への願望から、既存の価値観に反抗するのは、いつの時代でもどこの国でも見られるものだ。ただ、その表れ方はその社会を反映する傾向がある。
六十年代の若者なら社会主義の革命の闘志になるというのが、一番一般的だっただろう。ヒッピーカルチャーは日本ではそれほど流行らなかったが、それでもインドを放浪したりする人はいた。
今の日本では違う自分になろうにも、既に社会主義の理想は死に絶え、現実世界で実現できないから、アニメやラノベのキャラを気取るくらいになって、中二病(厨二病)と呼ばれている。ただ、中二病という言葉の用法は、革命の戦士気取りの者にも用いられている。
当然ながら中二病は成長過程での自然なもので、「病」と付くものの病気ではないし、医学の対象になることはない。つまり中二病などという医学用語は存在しない。
江戸時代の衆道もあるいはそういう傾向があったかもしれない。いわゆる歌舞伎者(この言葉は「かたぶく」が「かぶく」になったと言われている)
思春期に一時的なトランスジェンダー的行動が発生することは、日本ではよく知られている。男子校や女子高の疑似恋愛がそれで、それは成人後も空想の世界で様々な形でジャパンクールと呼ばれる諸芸術に取り入れられている。代表的なのはBL、百合、TSだ。他にもケモ耳だとか獣人だとかを好んだり、様々なフェチを伴う性癖がこうした芸術の欠かせぬ要素になっている。
百合(YURI)もガンダムシリーズの「水星の魔女」で完全に市民権を得てるし、TSは新海誠監督の『君の名は。』で世界的に知られることとなった。BLは七十年代の萩尾望都や竹宮恵子の作品にまで遡れるし、ケモ耳は今は『ウマ娘』が知られている。
こうしたトランスジェンダー的なものへの憧れは自然なもので、リアルな肉体的性癖とは関係なく、大人になっても維持されていることが多い。古くは衆道を気取った芭蕉さんや歌舞伎の女形が千両役者になったりもした。近代には宝塚の男役が多くの女の子を魅了してきた。
基本的に人がトランスジェンダーをかっこいいと思いそれに憧れるのは自然な感情で、それは逆説的に現実社会で要求されるジェンダーの縛りの窮屈さと裏腹なものだ。トランスジェンダーは自由の象徴と言っても良い。それは今の欧米社会でも同じだと思う。
こうした思春期に顕著に表れる、憧れとしてのトランスジェンダーはもちろんのこと、リアルなトランスジェンダーの多くも正常なものであり、病気ではない。そのため本来こうした人たちにホルモンの投与や外科手術など必要とはされてこなかった。それらが必要なのはいわゆる性同一性障害に限定される。病気でもない一般のLGBTにホルモン投与や外科手術を施すこと自体、日本では考えられないことだ。
むしろ欧米社会の方が、長いこと同性愛を犯罪とみなしてた歴史があって、それがつい最近俄に解放されたため、未だにどう扱っていいかわからず戸惑ってるのではないかと思う。
性同一性障害ではなく、普通のトランスジェンダーにホルモン投与や外科手術を施すのは、まだ彼らを病気と見て社会から排除しようとしているとしか思えない。ミシェル・フーコーは三つの排除の形式、禁止・狂気・非合理を挙げていたが、ようやく犯罪者(禁止)を免れたLGBTが、結局治療を必要とする精神病として扱われているのではないかと疑わざるを得ない。どうしてもLGBTをそのまま放っておくことができないみたいだ。
あるいはノンケなのかLGBTなのかはっきりしない連中を白黒つけなくては気が済まないのか。何が何でも心が男であるか女であるかという型にはめないと気が済まないのか。現実のLGBTはそんなにはっきりと分類できるものではない。
虹のシンボルで言えば、日本では虹は七色とされているが、国によっては六色だったり五色だったり四色だったりする。色の変化は連続的で境目のないグラデーションを形成している。それを分けるのはあくまで人間の側の任意の便宜的なものにすぎない。LGBTという虹は本来は境界など存在しないし、同じようにノンケ(英語ではストレートだとかシスだとか言うのか)とLGBTとの間の明確な境界線も存在しない。
リアルなトランスジェンダーは病気ではないし、治療の必要はない。まして中二病でトランスジェンダーを気取りたがる若者を治療する必要などない。明らかに欧米社会は狂っている。transgender crazeはまさにtransgender crazyだ。
そして、何よりも情けないのは、こういう遅れた野蛮な西洋のトランスジェンダー観を崇拝している日本の人権派の連中だ。むしろ我々は彼らに教えてやらなくてはならない。あんたらのトランスジェンダーの扱い方は根本的に間違ってると。同性愛を犯罪として排除することのなかった日本人だからこそ言えることだ。
もちろん、「あの子もトランスジェンダーになった─SNSで伝染する性転換ブームの悲劇─」が速やかに出版され、反面教師とされることを願う。
0 件のコメント:
コメントを投稿