2023年11月11日土曜日

 「野ざらし」のあとがきに、

 ≪本書は平成十二(二〇〇〇)年に東京図書出版会から共同出版した『野ざらし紀行─異界への旅─』を一部加筆修正したもので、あれから十二年たったとはいえ、句の解釈などの基本的な部分はほとんど変えてはいない。ただ、社会情勢などは随分変ったので、書き改めた部分のほとんどはそれに関わる部分だった。
 「俳句を解説した本はこれまでも数多くあるが、その大半は俳句の作者、いわゆる『俳人』によって書かれたものだ。」と以前に前書きで書いたが、その状況は今でも何も変ってないと思う。大学の研究者とはいえ、やはり何らかの形で俳人と交流し、俳句の指導を受けたり、結社に所属したりしていて、実質的には「俳人」と何ら変わりない。彼らのにとって大事なのは、今の自分達の俳句をいかに正当化するかであり、そのための研究だけが粛々と進められている。
 作者と研究者と結社、それにその結社の背後となる政治団体、それは「俳句村」といってもいい。古典俳諧にしても近代俳句にしても、自由な研究はこうした俳句村の外から行なわれなくてはならない。また、従来の結社の論理にとらわれない新しい古典の読解こそが、むしろ俳句の創作の方でも新たな可能性を切り開くのではないかと思う。
 今日では俳句の世界は高齢化が進み、その権威も世間に与える影響力もかなり弱まっている。芭蕉に関しても、一見研究され尽くされたかのように見えるが、むしろ本当の研究はこれから始まるのではないかと思っている。本書もそのきっかけになれば幸である。≫

とあったが、これを書いた二〇一二年の頃から何一つ状況はかわっていないので、結局こう書き加えておいた。

 ≪と、このあとがきを書いてからさらに十一年が経過し、再び大幅に修正することとなったが、状況は未だに何一つ変わってないのには驚きというよりもすでにあきらめの境地に入っている。願わくばこのまま俳句が永遠に日本から消え去るなんてことのないことを祈るのみだ。≫

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